馬はものを言わない

長寿の馬がいるというので、行ってきた。青森県の塚尾勝安牧場。

この馬、名前はユウミロク。
父はダービー馬カツラノハイセイコで、この馬自身、1986年のオークス(G1)で2着となり、
カブトヤマ記念という大きなレースも勝っています。
母になってからも、名障害馬ゴーカイなどを出し、競走馬としても繁殖としても名馬でした。
年齢は33歳、人間で言うと(一般的には人間の4倍らしい)
軽く100歳超えです。肉体を酷使されてきたのに、驚くべき生命力です!

今は、塚尾誠子さんが、体調の優れないご主人に変わってこの馬の面倒を見ている。
「主人が体調を崩してからは私がユウミちゃん(ユウミロク)の面倒を見ています。私は馬のことはあまりわからないので、窓際から見ている主人が色々と指示をしてくれる。私も一度寝込んでしまい、2日に一度しか餌を上げられない日もありました。私は馬の扱いはわからないけれども、ユウミちゃんがいる限り健康でなければならない。ユウミちゃんのおかげで元気でいられるのかな?」
その話を聞いて、人間は自分が好きなこと、得意なこと、利益になる事ばかりをやっていてはダメなんだな!
嫌いなこと、不得手なこと、得をしないことでも頑張ってやらなければならない、そんな縛りのようなものが人間には必要なんだなと考えさせられた。

今はゆっくり、のんびりと余生を過ごしているユウミロク。
現役時代、何をを思い走っていたのだろう。辛く苦しくはなかったのだろうか?
この馬がレースを勝つ度に、多くの競馬関係者に富をもたらし、多くの人がその恩恵を受けただろう。
私も厩務員時代はたくさんの馬の命の犠牲により、多くの恩恵を受けてきた。
でも、その馬たちに恩返しをしたことがなかった。いつも、馬に与えてもらうことばかりを考えていた。
そして競走馬や乗馬、繁殖を引退した馬たちの面倒を最後まで見るのは、馬による恩恵を受けない心優しき人達である。
馬たちに何かをしてあげられたら良かったな、今はそう思うことができる。
しかし、その馬達のほとんどが生きてはいない。
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